顔と運動神経への嫉妬。ジャニーズ叩きをエスカレートさせたのは、世の男性のゆがんだ劣等感だった【宝泉薫】「令和の怪談」(8) |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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顔と運動神経への嫉妬。ジャニーズ叩きをエスカレートさせたのは、世の男性のゆがんだ劣等感だった【宝泉薫】「令和の怪談」(8)

「令和の怪談」ジャニーズと中居正広たちに行われた私刑はもはや他人事ではない(8)【宝泉薫】

 

  あるいはもうひとつの「ジャニーズ的なもの」が影響しているとも考えられる。その世界がジャニー喜多川の少年愛嗜好によって成立している、という特殊な構造のことだ。

 筆者がそれを意識するようになったのがいつかはさだかでないが、ちゃんと言語化されたのを目にしたのは19歳のとき、自分も参加していたミニコミ誌『よい子の歌謡曲』においてだったと思う。歌謡曲雑誌なのでジャニーズのファンも多く、そのひとりがこんな文章を書いていた。

 「要するにジャニー氏は普通の少年が好きなんだろうな。そして彼らをアイドルに育てることはその子を落とすのと同じか、それ以上の喜びなんだと思う。でもその時にはもうその子は普通の少年(どっちの意味にせよ)じゃないわけ。単に若くて新鮮な方がいいというだけかもしれないけど、タレント成りたさで積極的に身を任せる子なんて相手にしないと思うな(するかな?)その辺のことに関する真偽や是否をどうこう言うのが目的じゃないからどうでもいいけどね」

 書いたのは、榊ひろと。のちに『筒美京平ヒットストーリー 1967-1998』を著すなど、大衆音楽への造詣が深く、また、ジャニーズの大ファンでもあった。

 ここからわかるのは、ジャニーズをめぐる「その辺のこと」が当時から噂としては存在していたこと。そして、ここに示された噂についての洞察と向き合い方はかなりしっくりくるものだった。

 その噂は噂のままで終わり、にもかかわらず、噂のまま現実を揺るがしているわけだが、それはこの噂が強烈な魔力を持つからだろう。榊は光GENJIの代表作『ガラスの十代』のレビュー(『80′sアイドル・ライナーノーツ』所収)のなかで、メンバーが半裸になり、怪我人まで出しながら歌い踊ったパフォーマンスの「悲愴感」に着目。こんな賛辞を贈った。

 「この頃の光Gには地位も分別もあるはずのプロデューサーの狂気を顕在化させるだけの魅力があったということか。『STAR LIGHT』のボーイソプラノの如く、移りゆくものの中にある美の神髄を、どんなに熱烈なファンよりも知り得る者のみに創造することのできた究極のアートと言えるだろう」

 

光GENJI

 

 筆者も同感で、ジャニーの少年愛、元気で可愛い男の子たちをステージで輝かせたいというこだわりがこれほど見事に結実した作品はない。ある意味、例の噂がスパイスとしての刺激的効果をもたらしてもいて、ジャニーズ的なものを面白がる層にとっては「魔法の力」である。

次のページ忌むべき邪なものだととらえる層の負の感情の爆発

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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